福島 大悟

自分たちの手に農を取り戻す

農、建築、テクノロジー、社会、生き方

こんにちは。まめなの大悟です。
僕は今年の夏で久比に移住してから2年半たちます。
普段、久比ではメインは農業部門で「nouno」という持続可能な農の探究拠点を作るため活動しています。その他にも、久比の歴史・文化を探り未来に繋げる「久比歴史民俗学科(レキミン)」や、未来の海上モビリティの開発「Project MIO」など様々なプロジェクトに関わらせていただいています。

2019年4月4日久比初来島

僕が久比に移住したきっかけは、「一般社団法人まめな」更科さんと三宅さんとの出会いでした。高校時代、過疎高齢化の課題に対して何か行動に移したいと思っていた僕は、ある人の紹介で、高校がある神石高原町に訪れていた更科さんと三宅さんに出会いました。また、三宅さんが行うことになった神石高原の酒蔵再生に、高校のプロジェクトとして関わらせてもらったことをきっかけに、三宅さんがされているナオライ株式会社の本社がある久比・三角島にも訪れるようになりました。

農床で久比のおばあちゃんにお野菜をいただく

久比は、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島にある人口400人ほどの小さな農村です。久比には、「農床」と呼ばれる家庭菜園のスペースがどの家にも必ずあり、「うちは早生育てるけん、あんたは晩生育てぇ」といった形で、足りない野菜を互いに補い合いながら、人々は物々交換をして暮らしています。久比には、僕らが普段浸っている金銭的価値基準だけではない、「ありがとう」で物事が回る「感謝経済」とも言える一つの地域のあり方が残っていました。過疎高齢化が深刻化していく農村漁村地域が生き残る道を探したい僕にとって、この久比での「農床」と「感謝経済」のあり方は、大きなヒントになると感じました。

僕は、まめなを新しい時代のライフスタイルや社会のあり方を探究するコモンズだと捉えています。

久比には、まめなの活動によって全国から様々な背景を持つ方々が訪れます。福祉、農業、テクノロジー、教育、デザイン、ライターなどその分野は多種多様です。本気で今の社会の仕組みを変えようと活動されている方、今の社会のあり方に疑問を持っている方、自分が心の底からやりたいことが何かを探しに来られる方々がまめなで出会い、常にどこかで新しいアイデアや発想、発見や行動が生まれています。

また特に、その分野の第一線で活躍し、その分野に対して一番ワクワクしている人から直接話が聞けるというのがまめなの環境の特殊性だと感じています。そしてまめなには、そこで受けたインプットを、そのまま自分が考えている企画や活動に落とし込める現場があります。

まめなに出会うまで、僕にとって最も興味がある分野は建築でした。それは今も変わっていませんが、それ以上に、それまで全く興味がなかった分野の面白さを知り体感することで、自分の視野や発想が変わり、それまで自分になかった考え方や行動ができることに対するワクワク感・充実感があります。

まめなのある久比の景色
久比に来た方と農床の豆の収穫

僕らnounoが考える自律分散型社会の図

現在、まめなでの経験を通して僕が考え続けているテーマがあります。それは、「農村漁村地域を生活基盤とした自律分散型社会の実現をどうやったら達成できるのか。」というものです。

自律分散型社会とは、「自律したもの同士がオープンにつながりながら形成される社会」のことです。

集落、島、村や町、県などのある一定の地理条件や文化を共有する、比較的半径の小さなエリアやコミュニティの中で、衣食住に関わる分野やエネルギーなど、生活していく上で必要不可欠なものを自給自足することが可能になったとします。そうすることで、都市などの今まで情報や人口が集中していた中央に権力が集中することなく、それぞれのエリアやコミュニティは他の政治的決定や情勢に大きく左右されずに安定的に社会を維持させていくことができるのではないかと考えています。
さらに、それぞれのエリアやコミュニティに居ながらにして、 Web3(ブロックチェーン技術による新しいインターネットの形)やAIや通信技術の更なる発達により、物理的距離や言語の壁に関係なく世界中の誰とでもやりとりができたり情報を得たりすることができるようになります。加えて、自動運転車をはじめとするモビリティの進化によって、それぞれのエリアやコミュニティを絶えず行き来する多拠点生活者も当たり前となり、自分の居場所を複数持つことも可能になると考えています。このように、それぞれのコミュニティ同士がテクノロジーによりオープンにつながり合う相互扶助の関係を築くことで、古い封建的な慣習に関わらず、農村漁村地域を私たちが生きていく上でのインフラがある場所と捉えることができれば、自然と共生したより良い強固な社会を築くことができるのではないかと考えています。

また、これらの仕組みは決して強制的な権限を有した地方有力者や一部の権力者たちによって維持管理されるものではなく、そこに住む人々の自治で維持されるべきであると考えています。自分たちが自らの暮らしに関わるインフラの維持に携わることに楽しさや意義を見出すことができ、かつ持続可能な仕組みや取り組みをつくることが重要であると考えています。

そして現在、僕はこれらのテーマや考えに基づき、上記の仕組みを実現するためのプラットフォームを、まずは農業分野で、Web3のアイデアを活用して構築するため活動を始めています。その活動チームが「nouno」です。「nouno」は自分たちの手に農を取り戻すため、「全ての人にとって農を身近にする」をモットーに、このWeb3上のプラットフォーム(DAO)を基盤とした持続可能な農の探究拠点を作ることを目指しています。

●nounoの具体的なこれまでの活動とこれからの展望
https://note.com/brainy_tern728/n/n494f5e96076b

●僕がnounoを始めた理由
https://note.com/brainy_tern728/n/ndc31ec1dbbf9

●農に対するnounoの試行錯誤「甘夏レポート」https://note.com/brainy_tern728/n/nbd5a9c5077b3

また今後、農業におけるWeb3上の共創のプラットフォーム(DAO)ができれば、「古民家の再生や利活用・文化的景観の保全に対するDAO」にnounoで築き上げた仕組みをそのまま転用し、農業として農村漁村地域の「食」の分野から農村漁村地域にどう住むかという「住」の未来を変えたいという野望を抱いています。

まめなで活動していると、本当に多くのインスピレーションを受けます。こうした妄想が膨らむのも、まめなに訪れる様々な世代の方々との会話、村のおじいちゃんおばあちゃんたちとの世間話やふれあい、庭や畑にいる様々な生き物の営みなど、自分のプロジェクト以外での活動や生活でたくさんの刺激を受けるからだと感じています。何気なく自然や人の動きを観察したり自ら手を動かすことでふと降りてくるアイデアがあります。

そうして出てきたアイデアを、まめなの環境下で様々な人に話すことで磨かれ、実現に向けた本気の思いをぶつけると、それに応えてサポートしてくれる大人がここにはたくさんいます。

ぜひ、皆さんにまめなへ来ていただいてそうした環境を体感していただければと思います。あいだす内にある「Bar邂逅」、図書館や奥あいだす(旧上本邸)の完成など、まめなで滞在し活動の現場となるような拠点も次々と完成しています。まめなでぜひお待ちしています!